パーキンソン病で体が右に傾く原因とは?ピサ症候群・姿勢異常の見分け方を理学療法士が解説

パーキンソン病で体が右に傾く原因とは

パーキンソン病専門AXISプロジェクト代表の理学療法士井上です。

今回の記事は、よくご質問のある「体が傾いてしまうのはなぜ?」に対して解説をしていきます。リハビリ内容まで網羅するととても長い記事になってしまうので、2回に分けてご説明していきます。

目次

パーキンソン病で体が右に傾くのはなぜ?まず知っておきたい結論

パーキンソン病の方で「体が右に傾く」「歩いていると右に寄ってしまう」「座っているとだんだん右へ倒れてくる」といった姿勢の変化がみられることがあります。

結論からいうと、パーキンソン病で体が右に傾く原因は一つではありません。

代表的には、体の片側の筋肉が硬くなること、反対側の筋力が低下すること、体幹をまっすぐ保つ感覚がずれること、薬の影響、脊柱(背骨)や骨盤まわりの変形・痛みなどが関係します。つまり、「右に傾く=右側だけが悪い」と単純に考えるのではなく、左右の筋肉の硬さ、筋力、バランス感覚、歩き方を総合的にみる必要があります。

パーキンソン病では、筋肉のこわばりや動きにくさが左右どちらかに強く出ることがあります。その影響で、体幹の左右差が大きくなり、立っている時や歩いている時に体が右へ傾きやすくなることがあります。また、本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には体が傾いていることもあります。これは、体の位置を感じ取る感覚や、姿勢を修正する反応がうまく働きにくくなるためです。

特に、立っている時や歩いている時に体幹が左右どちらかへ傾く状態は、「ピサ症候群」と呼ばれることがあります。ピサ症候群では、座位や立位、歩行中に体が一方向へ傾きやすく、横になると傾きが軽くなる場合があります。ただし、長期間同じ姿勢が続いている場合や、背骨・骨盤の変形がある場合には、横になっても傾きが戻りにくいこともあります。

そのため、体が右に傾く場合は、「どちらの筋肉が硬いのか」「どちらの筋力が弱いのか」「寝ると傾きが戻るのか」「歩く時に強くなるのか」「薬を変更してから出てきたのか」などを確認することが大切です。

自己判断で無理に体をまっすぐ伸ばそうとしたり、右側だけを鍛えたりすると、かえって痛みや代償動作につながることもあります。まずは主治医や理学療法士に相談し、原因を見極めたうえで、ストレッチ・筋力トレーニング・バランス練習・歩行練習を組み合わせていくことが重要です。

右に傾く=右側だけが悪いとは限らない

体が右に傾いていると、「右側の筋肉が弱いのでは?」「右側を鍛えればよいのでは?」と考えたくなるかもしれません。

しかし、パーキンソン病による姿勢の傾きでは、必ずしも「傾いている側だけ」に原因があるとは限りません。

たとえば、体が右に傾いている場合でも、右側の体幹や腰まわりの筋肉が硬くなって右へ引っ張られていることもあれば、反対側である左側の体幹や股関節まわりの筋力が低下して、体を左方向へ支え戻す力が弱くなっていることもあります。

つまり、見た目には「右に倒れている」ように見えても、原因は右側の硬さ、左側の筋力低下、骨盤の傾き、歩行時の重心移動の偏りなど、いくつかの要素が重なっていることがあります。

また、パーキンソン病では、筋肉のこわばりや動きにくさが左右どちらかに強く出ることがあります。そのため、体の左右差が少しずつ大きくなり、本人も気づかないうちに「いつもの楽な姿勢」が右に傾いた姿勢になっていることがあります。

さらに、本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には右に傾いている場合もあります。これは、体の位置を感じ取る感覚や、まっすぐを判断する感覚がずれている可能性があるためです。

そのため、右への傾きを改善するためには、単に右側を伸ばす、右側を鍛えるという考え方だけでは不十分です。

「どちら側が硬いのか」「どちら側の筋力が弱いのか」「骨盤や背骨に変形があるのか」「立っている時と歩いている時で傾き方が変わるのか」などを確認しながら、原因に合わせたリハビリを行うことが大切です。

体が右に傾く場合は、右側だけを見るのではなく、体全体のバランスや左右差を評価することが重要です。

立っている時・歩いている時に傾きやすい理由

パーキンソン病で体が右に傾く場合、座っている時よりも、立っている時や歩いている時に傾きが目立つことがあります。

これは、立位や歩行では、体をまっすぐ保つために多くの機能が同時に働く必要があるためです。

立っているだけでも、私たちの体は完全に静止しているわけではありません。足の裏で床を感じ取り、足首・膝・股関節・体幹の筋肉を細かく調整しながら、重心が大きくずれないようにバランスを保っています。

しかし、パーキンソン病では、筋肉のこわばり、動き出しの遅さ、姿勢反応の低下、体の位置を感じ取る感覚のずれなどによって、この細かな姿勢調整が難しくなることがあります。

特に歩行中は、片足に体重を乗せる瞬間が必ずあります。この時、骨盤や体幹を支える力が弱かったり、左右の筋肉の硬さに差があったりすると、体が右へ傾きやすくなります。

たとえば、右足に体重を乗せた時に体が右へ倒れ込む場合もあれば、左足で支える力が弱く、結果として体が右に流れてしまう場合もあります。見た目は同じ「右への傾き」でも、原因となっている場所は人によって異なります。

また、パーキンソン病では歩幅が小さくなったり、腕の振りが少なくなったり、方向転換が苦手になったりすることがあります。これらも体幹の傾きと関係します。歩いている時に重心移動がスムーズに行えないと、体をまっすぐ保つよりも、いつもの傾いた姿勢のまま歩く方が楽に感じてしまうことがあります。

そのため、右への傾きは「立っている時に強いのか」「歩いている時に強いのか」「方向転換の時に強いのか」「疲れてくると強くなるのか」を確認することが大切です。

立位と歩行では必要なバランス能力が異なるため、傾きの出方を見ることで、筋力の問題なのか、柔軟性の問題なのか、感覚の問題なのか、歩行時の重心移動の問題なのかを考える手がかりになります。

寝るとまっすぐになる場合と、戻りにくい場合の違い

体が右に傾く場合、「寝るとまっすぐになるかどうか」は大切な確認ポイントです。

立っている時や座っている時には右に傾いていても、仰向けに寝ると体がまっすぐに戻る場合があります。このような場合は、骨そのものの変形よりも、筋肉のこわばり、姿勢を保つ力の低下、バランス感覚のずれ、体幹をコントロールする機能の低下などが関係している可能性があります。

一方で、仰向けに寝ても体の傾きがあまり戻らない場合や、背骨・骨盤のゆがみが強く残る場合は、脊柱の変形や関節の硬さ、長期間続いた姿勢のくせなどが関係していることがあります。

つまり、寝るとまっすぐになる傾きは、姿勢のコントロールや筋肉のバランスの問題が中心になっている可能性があります。反対に、寝ても戻りにくい傾きは、筋肉だけでなく、背骨や骨盤などの構造的な変化も考える必要があります。

ただし、これはあくまで一つの目安です。寝ると戻るから軽い、寝ても戻らないから必ず重い、という単純な話ではありません。

たとえば、普段は寝ると戻る傾きでも、疲労が強い時、薬の効き方が不安定な時、腰痛がある時には傾きが強く見えることがあります。また、長年同じ方向に傾いた姿勢が続いていると、最初は戻っていた傾きが、少しずつ戻りにくくなることもあります。

自宅で確認する場合は、仰向けに寝た時に、頭・胸・骨盤・足の向きがどのようになっているかを見てみましょう。家族が確認する場合は、無理に体を押してまっすぐにするのではなく、自然に寝た状態で左右差を見ることが大切です。

体の傾きが急に強くなった場合、痛みやしびれを伴う場合、転倒が増えている場合、薬の変更後から傾きが目立つ場合には、自己判断せず、主治医や理学療法士に相談しましょう。

体が右に傾く原因を考える時は、「立つと傾くのか」「歩くと傾くのか」「寝ると戻るのか」「寝ても戻らないのか」を確認することで、リハビリの方向性を考えやすくなります。

パーキンソン病で体が横に傾く代表的な状態

パーキンソン病で体が右に傾く原因の一つであるピサ症候群を説明したイラスト

パーキンソン病で体が右や左に傾く場合、代表的な状態として「ピサ症候群」があります。

ただし、体が横に傾いているからといって、すべてがピサ症候群とは限りません。側弯症のような背骨の変形、腰曲がり、前傾姿勢、首下がりなど、似たように見える姿勢異常が関係していることもあります。

また、パーキンソン病そのものによる姿勢調整の問題だけでなく、加齢による筋力低下、関節の硬さ、腰痛、過去の圧迫骨折、長年の姿勢のくせなどが重なっている場合もあります。

そのため、「右に傾いている」「左に傾いている」という見た目だけで判断するのではなく、どのような場面で傾くのか、寝ると戻るのか、背骨の変形があるのか、痛みを伴うのかなどを確認することが大切です。

ここでは、パーキンソン病で体が横に傾く時に考えられる代表的な状態について整理します。

ピサ症候群とは?体幹が左右どちらかに傾く姿勢異常

ピサ症候群とは、体幹が左右どちらか一方へ傾いてしまう姿勢異常のことです。

名前の由来は、イタリアにある「ピサの斜塔」のように、体が斜めに傾いて見えることからきています。パーキンソン病の方では、立っている時、座っている時、歩いている時などに、体幹が右または左へ傾くことがあります。

ピサ症候群の特徴は、単なる姿勢のくせではなく、本人がまっすぐにしているつもりでも体が傾いてしまうことです。また、立位や歩行時に傾きが強くなり、横になると傾きが軽くなる場合があります。

原因としては、体幹の筋肉の左右差、筋肉のこわばり、ジストニア、バランス反応の低下、体のまっすぐを感じ取る感覚のずれ、薬の影響などが考えられます。

たとえば、体が右に傾いている場合でも、右側の筋肉が硬くなって右へ引っ張っていることもあれば、左側の体幹や股関節まわりの筋力が弱く、体を左へ支え戻せないこともあります。

つまり、ピサ症候群では「どちらに傾いているか」だけでなく、「なぜその方向に傾いているのか」を評価することが重要です。

また、ピサ症候群は早い段階で対応することが大切です。長期間同じ方向に傾いた姿勢が続くと、筋肉や関節が硬くなり、背骨や骨盤の変形につながることがあります。最初は寝ると戻っていた傾きが、時間の経過とともに戻りにくくなることもあります。

そのため、体の傾きに気づいたら、自己判断で様子を見すぎず、主治医や理学療法士に相談することが大切です。

側弯症・骨の変形との違い

体が右や左に傾いている場合、ピサ症候群だけでなく、側弯症や背骨の変形が関係していることもあります。

側弯症とは、背骨が正面から見て左右に曲がっている状態です。加齢に伴う変形、骨粗しょう症による圧迫骨折、長年の姿勢のくせ、腰痛などが関係している場合があります。

ピサ症候群と側弯症の大きな違いは、「姿勢を変えた時に傾きが戻るかどうか」です。

ピサ症候群では、立っている時や歩いている時に体が傾いていても、横になると傾きが軽くなることがあります。これは、筋肉のこわばりや姿勢コントロールの問題が関係している可能性があるためです。

一方で、側弯症や背骨の変形が強い場合は、仰向けに寝ても体の傾きが残ることがあります。背骨そのものの形が変化しているため、姿勢を変えても完全にはまっすぐに戻りにくいことがあります。

ただし、実際にはピサ症候群と側弯症がはっきり分かれるとは限りません。最初は筋肉や姿勢調整の問題として傾きが出ていたものが、長期間続くことで背骨や骨盤の変形を伴うこともあります。

そのため、「寝ると戻るから大丈夫」「寝ても戻らないから改善しない」と単純に判断するのではなく、医師による診察や画像検査、理学療法士による姿勢・歩行評価を組み合わせて確認することが大切です。

特に、体の傾きに加えて腰痛、背中の痛み、しびれ、歩行距離の低下、転倒の増加がある場合は、整形外科的な問題も含めて確認する必要があります。

腰曲がり・前傾姿勢・首下がりとの違い

パーキンソン病では、体が横に傾くだけでなく、前に曲がる姿勢や、首が下がる姿勢がみられることもあります。

体幹が左右どちらかに傾く状態がピサ症候群であるのに対し、腰や体幹が前に曲がる状態は「腰曲がり」や「前傾姿勢」と表現されます。また、首が前に倒れて頭が下がる状態は「首下がり」と呼ばれることがあります。

これらは似ているように見えますが、傾く方向が異なります。

ピサ症候群では、体が右または左へ傾きます。一方、腰曲がりや前傾姿勢では、体が前方へ曲がります。首下がりでは、主に首から頭部が前方へ落ちるような姿勢になります。

ただし、実際の生活場面では、これらが単独で起こるとは限りません。たとえば、前かがみになりながら右に傾く、腰が曲がった状態で歩くうちに体が横へ流れる、首が下がることで視線が下がり、歩行時のバランスが崩れる、というように複数の姿勢異常が重なることがあります。

パーキンソン病では、筋肉のこわばり、姿勢反応の低下、重心移動のしにくさ、歩幅の小ささなどが重なりやすいため、姿勢の崩れ方も一人ひとり異なります。

そのため、「右に傾いているからピサ症候群」「前に曲がっているから腰曲がり」と単純に分けるのではなく、体全体を見て評価することが大切です。

リハビリでは、横への傾きだけを修正するのではなく、頭の位置、胸郭、骨盤、股関節、足のつき方、歩行時の重心移動まで含めて確認します。体のどこから姿勢が崩れているのかを見極めることで、ストレッチ、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習の内容を適切に選びやすくなります。

体が横に傾く場合でも、前傾姿勢や首下がりが重なっていることがあります。そのため、気になる姿勢変化がある場合は、早めに主治医や理学療法士に相談し、原因に合わせた対応を行うことが大切です。

パーキンソン病で右に傾く主な原因7つ

パーキンソン病で体が右に傾く原因は、一つに決められるものではありません。

右側の筋肉が硬くなっている場合もあれば、反対側である左側の筋力が弱くなっている場合もあります。また、筋肉や関節だけでなく、体をまっすぐに感じる感覚、薬の効き方、背骨や骨盤の変形などが関係していることもあります。

そのため、「右に傾いているから右側を伸ばせばよい」「右側を鍛えればよい」と単純に考えるのではなく、原因を分けて考えることが大切です。

ここでは、パーキンソン病で体が右に傾く時に考えられる主な原因を7つに整理して解説します。

原因1:筋強剛により体の片側が硬くなる

パーキンソン病の代表的な症状の一つに、筋強剛があります。筋強剛とは、筋肉がこわばり、関節を動かそうとした時に抵抗感が出る状態です。

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この筋強剛が体の左右どちらかに強く出ると、姿勢にも左右差が生じやすくなります。

たとえば、体の右側の体幹や腰まわりの筋肉が硬くなると、体が右方向へ引っ張られるように傾くことがあります。反対に、左側の筋肉が硬くなって体の動きが制限され、結果として右側へ重心が偏ることもあります。

つまり、右に傾いているからといって、必ず右側だけが硬いとは限りません。

筋強剛が関係している場合は、体幹を左右に倒す動き、ひねる動き、骨盤を動かす動きが小さくなりやすくなります。その結果、歩行時の重心移動がスムーズに行えず、いつも同じ方向へ体が傾きやすくなることがあります。

また、パーキンソン病では動作が小さくなりやすいため、本人が思っている以上に体幹の動きが少なくなっていることもあります。日常生活の中で、振り向きにくい、寝返りがしにくい、歩いていると体が片側へ寄っていくといった変化がある場合は、筋肉のこわばりが関係している可能性があります。

このような場合は、硬くなっている筋肉を無理に伸ばすのではなく、体幹や骨盤をゆっくり動かしながら、左右差を確認していくことが大切です。

原因2:ジストニアにより体幹が一方向へ引っ張られる

ジストニアとは、自分の意思とは関係なく筋肉が過剰に収縮し、体の一部がねじれたり、傾いたりする状態です。

パーキンソン病では、手足だけでなく、体幹の筋肉にもジストニアが関係することがあります。体幹の片側の筋肉が過剰に働くと、体が右または左へ引っ張られるように傾くことがあります。

このような体幹の傾きは、ピサ症候群の原因の一つとして考えられています。

たとえば、右側の体幹筋が過剰に収縮すると、体が右へ倒れ込むように傾くことがあります。一方で、体幹の回旋や骨盤のねじれが加わると、単純に横へ傾くだけでなく、体が斜めにねじれたように見えることもあります。

ジストニアが関係している場合、疲れている時、薬の効果が切れかかっている時、歩いている時、緊張している時などに傾きが強くなることがあります。また、本人が意識してまっすぐにしようとしても、すぐに元の傾きに戻ってしまうこともあります。

ただし、ジストニアかどうかは自己判断が難しいため、主治医や理学療法士による確認が必要です。

体幹が一方向へ強く引っ張られるような感覚がある場合や、薬の効き方によって傾きが変わる場合は、診察時にその様子を伝えることが大切です。家族が動画を撮影しておくと、医師や理学療法士に状態を伝えやすくなります。

原因3:中臀筋など股関節まわりの筋力低下

歩行時に骨盤を安定させる中殿筋の位置と働きを説明したイラスト

体が右に傾く原因として、股関節まわりの筋力低下も重要です。

特に関係しやすい筋肉の一つが、中臀筋です。中臀筋は、お尻の横にある筋肉で、立っている時や歩いている時に骨盤を水平に保つ働きがあります。

歩く時には、片足で体を支える瞬間があります。この時、中臀筋が十分に働かないと、骨盤や体幹を安定させることが難しくなり、体が横へ傾きやすくなります。

たとえば、左側の中臀筋が弱くなると、左足で体重を支えた時に骨盤が安定せず、体が右側へ流れるように傾くことがあります。反対に、右側の中臀筋が弱い場合は、右足で支える時に右側へ倒れ込むような歩き方になることがあります。

このように、体が右に傾いて見えても、右側の筋力低下が原因の場合もあれば、左側の支える力の低下が原因の場合もあります。

パーキンソン病では、歩幅が小さくなり、股関節を大きく使う機会が減りやすくなります。その結果、股関節まわりの筋力が低下し、歩行時の骨盤や体幹の安定性が低下することがあります。

また、転倒への不安が強くなると、足を大きく出すことを避けるようになり、さらに股関節まわりの筋肉を使う機会が減ってしまいます。

中臀筋などの筋力低下が関係している場合は、単に筋トレをするだけでなく、「片足に体重を乗せる練習」「骨盤を安定させる練習」「歩行時に左右へ流れすぎない練習」などが重要になります。

ただし、バランスが不安定な方が一人で片足立ちや横歩きの練習を行うと転倒の危険があります。必要に応じて、手すりや壁を使い、安全な環境で行うことが大切です。

原因4:体幹筋の左右差と柔軟性低下

体をまっすぐ保つためには、腹筋や背筋だけでなく、体幹の横側にある筋肉も重要です。

体幹の左右の筋肉は、立っている時や座っている時に、体が横へ倒れすぎないように支えています。しかし、パーキンソン病では、筋肉のこわばりや動作量の低下によって、体幹の筋肉に左右差が生じることがあります。

たとえば、右側の体幹筋が硬くなり、短くなっていると、体が右へ引き寄せられやすくなります。一方で、左側の体幹筋が弱くなっていると、体を左方向へ戻す力が不足し、結果として右へ傾きやすくなります。

このように、体幹の傾きは「硬さ」と「弱さ」の両方が関係していることがあります。

また、長い期間、右に傾いた姿勢で過ごしていると、右側の筋肉は縮こまり、左側の筋肉は伸ばされた状態になりやすくなります。すると、ますます右に傾いた姿勢が楽に感じられ、まっすぐの姿勢を保つことが難しくなることがあります。

柔軟性の低下がある場合、体を反対側に倒す動きや、体幹をひねる動きが制限されやすくなります。座った状態で左右に体を倒した時に、片側だけ動きにくい、突っ張る感じが強い、痛みが出るといった場合は、体幹の柔軟性に左右差があるかもしれません。

リハビリでは、硬くなっている側をゆるめること、弱くなっている側を働かせること、そして左右どちらにも動ける体幹を作ることが大切です。

ただし、無理に体を伸ばしたり、痛みを我慢してストレッチをしたりすると、腰痛や筋肉の防御的な緊張につながることがあります。体幹の柔軟性を改善する時は、痛みのない範囲で、ゆっくりと行うことが大切です。

原因5:まっすぐの感覚がずれる|体性感覚・垂直認知の問題

パーキンソン病で体が右に傾く場合、筋力や柔軟性だけでなく、「まっすぐの感覚」がずれていることもあります。

私たちは普段、視覚、足の裏の感覚、関節の位置を感じる感覚、内耳のバランス機能などを使って、自分の体がどこにあるのかを判断しています。このような体の位置を感じ取る働きを、体性感覚といいます。

パーキンソン病では、この体性感覚や姿勢を調整する働きがうまく使いにくくなることがあります。そのため、本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には右へ傾いているということが起こります。

これは、本人の努力不足ではありません。

体の中で感じている「まっすぐ」と、実際の姿勢にずれが生じている可能性があります。そのため、周囲から「もっと左に寄って」「まっすぐ立って」と言われても、本人にとっては逆に傾いているように感じることもあります。

このような場合、鏡や壁、写真、動画などを使って、自分の姿勢を視覚的に確認することが役立つことがあります。

たとえば、鏡の前で肩の高さや骨盤の位置を確認する、壁に背中をつけて左右差を感じる、家族に歩行中の姿勢を動画で撮影してもらう、といった方法です。

ただし、視覚情報だけに頼りすぎると、鏡がない場面で姿勢を保ちにくいこともあります。そのため、リハビリでは、鏡で確認する練習と、鏡を使わずに体の感覚でまっすぐを再学習する練習を組み合わせることが大切です。

まっすぐの感覚がずれている場合は、筋トレやストレッチだけでは改善が難しいことがあります。体の位置を感じる練習、重心を左右に移動する練習、座位や立位で中心を探す練習などを行い、少しずつ姿勢感覚を整えていくことが重要です。

原因6:薬の影響や薬効の変動

パーキンソン病で体が右に傾く場合、薬の影響や薬効の変動が関係していることもあります。

パーキンソン病の薬は、動きにくさや筋肉のこわばりを改善するために重要です。一方で、薬の量や種類、効き方の変化によって、姿勢の傾きやジストニアのような症状が目立つことがあります。

たとえば、薬の効果が切れかかる時間帯に体が傾きやすくなる場合があります。反対に、薬がよく効いている時間帯に不随意運動や姿勢の崩れが出やすくなる場合もあります。

また、薬を変更した後や、薬の量が増減した後から体の傾きが目立つようになった場合は、薬との関連を確認することが大切です。

ここで重要なのは、自己判断で薬を中止したり、量を変えたりしないことです。

薬の調整は、症状全体を見ながら慎重に行う必要があります。体の傾きが薬の影響と関係している可能性がある場合は、必ず主治医に相談しましょう。

受診時には、「いつ傾きが強くなるのか」を具体的に伝えると役立ちます。たとえば、朝起きた時に強いのか、薬を飲む前に強いのか、薬を飲んで何時間後に強いのか、疲れてくる夕方に強いのかを記録しておくと、薬効との関係を考えやすくなります。

家族が見ている場合は、傾きが強い時間帯の写真や動画を残しておくのも有効です。

リハビリだけでなく、薬の効き方を含めて確認することで、より適切な対応につながります。

原因7:脊柱変形・腰痛・整形外科的な問題

体が右に傾く原因は、パーキンソン病そのものだけとは限りません。

背骨や骨盤、股関節、膝関節などの整形外科的な問題が関係していることもあります。

たとえば、側弯症、圧迫骨折、腰椎の変形、股関節の痛み、膝の変形、脚長差などがあると、体をまっすぐ保つことが難しくなり、右または左へ傾きやすくなることがあります。

特に高齢の方では、パーキンソン病による姿勢異常に加えて、加齢による背骨の変形や腰痛が重なっていることがあります。その場合、筋肉や神経の問題だけでなく、骨や関節の状態も含めて考える必要があります。

脊柱変形や腰痛が関係している場合、寝ても傾きが戻りにくい、立っていると腰や背中が痛くなる、長く歩くと傾きが強くなる、片側の足に体重をかけると痛みが出る、といった特徴がみられることがあります。

また、痛みを避けるために無意識に体を傾けている場合もあります。たとえば、右腰が痛い方が、痛みを避けるために体重のかけ方を変え、その結果として体が右または左へ傾いて見えることがあります。

このような場合、姿勢だけを無理に直そうとしても、痛みが強くなったり、別の場所に負担がかかったりすることがあります。

体の傾きに加えて、腰痛、背中の痛み、しびれ、足の痛み、急な姿勢変化、転倒の増加がある場合は、神経内科だけでなく、整形外科的な評価も必要になることがあります。

パーキンソン病で体が右に傾く場合は、病気による姿勢異常だけでなく、骨や関節、痛みの影響も含めて総合的に確認することが大切です。

右に傾く人はどこをチェックすればよい?自宅で確認したいポイント

パーキンソン病で体が右に傾く場合、自宅で姿勢や歩き方を確認しておくと、主治医や理学療法士に相談する時に役立ちます。

ただし、自宅での確認はあくまで目安です。原因を自分で決めつけるためではなく、「どの場面で右に傾きやすいのか」「寝ると戻るのか」「歩く時に強くなるのか」などを把握するために行います。

体の傾きは、立っている時、座っている時、歩いている時、疲れている時、薬の効果が切れかかっている時など、状況によって変わることがあります。そのため、一度だけ確認するのではなく、いくつかの場面で見ておくことが大切です。

ここでは、自宅で確認しやすいポイントを紹介します。

鏡で見る:肩・骨盤・頭の位置を確認する

まず確認しやすいのが、鏡を使った姿勢チェックです。

鏡の前に立ち、正面から自分の姿勢を見てみましょう。この時に確認したいのは、肩の高さ、骨盤の高さ、頭の位置です。

体が右に傾いている場合、右肩が下がって見える、頭が右へ寄っている、骨盤が左右どちらかに傾いている、といった変化がみられることがあります。

ただし、鏡で見る時に大切なのは、「無理にまっすぐ立とうとしすぎないこと」です。普段通りに立った時に、自然な姿勢がどのようになっているかを確認することが大切です。

本人はまっすぐ立っているつもりでも、鏡で見ると右に傾いていることがあります。これは、体のまっすぐを感じる感覚と、実際の姿勢にずれがあるためです。

家族が一緒に確認する場合は、「右に傾いているよ」と強く指摘するのではなく、「肩の高さが少し違うね」「頭が少し右に寄って見えるね」というように、客観的に伝えるとよいでしょう。

鏡での確認は、姿勢の左右差に気づくきっかけになります。ただし、鏡だけでは筋肉の硬さや筋力低下までは判断できないため、気になる場合は専門家に相談しましょう。

壁に背中をつける:体幹の傾きや左右差を見る

次に確認しやすい方法が、壁に背中をつけて立つ方法です。

壁に背中を向けて立ち、後頭部、背中、お尻がどのように壁に触れるかを確認します。この時、無理に体を壁へ押しつける必要はありません。自然に立った状態で、体のどこが壁に触れやすいか、左右差があるかを見ます。

体が右に傾いている場合、右肩や右背中だけが壁に触れやすい、左側が浮いている、頭が右へ寄っている、といった左右差がみられることがあります。

また、壁に立った時に、普段の姿勢と比べて「まっすぐが違和感として感じる」こともあります。これは、日常的に右へ傾いた姿勢が続いていると、その姿勢の方が楽に感じられることがあるためです。

壁を使ったチェックでは、体幹の傾きだけでなく、頭の位置、背中の丸まり、骨盤の位置も確認しやすくなります。

ただし、バランスが不安定な方は、一人で行わないようにしましょう。転倒の危険がある場合は、家族に見守ってもらうか、無理に行わないことが大切です。

壁に背中をつけた時に強い痛みが出る場合や、姿勢を戻そうとすると腰や背中に痛みが出る場合は、無理に続けず、医師や理学療法士に相談してください。

仰向けで寝る:傾きが戻るか確認する

体が右に傾く場合、仰向けで寝た時に傾きが戻るかどうかも重要な確認ポイントです。

立っている時や座っている時には右に傾いていても、仰向けに寝ると体が比較的まっすぐに戻ることがあります。この場合、筋肉のこわばり、姿勢を保つ力の低下、体幹のコントロールの問題、まっすぐの感覚のずれなどが関係している可能性があります。

一方で、仰向けで寝ても体の傾きがあまり戻らない場合は、背骨や骨盤の変形、関節の硬さ、長期間続いた姿勢の影響なども考える必要があります。

確認する時は、硬すぎない床やベッドに仰向けになり、頭、胸、骨盤、足の向きがどのようになっているかを見ます。家族が確認する場合は、体を無理に押してまっすぐにするのではなく、自然に寝た状態で左右差を見ることが大切です。

また、寝た状態で右側の腰や脇腹が縮こまっている感じがある、反対側に体を倒しにくい、寝返りがしにくいといった場合は、体幹や股関節まわりの柔軟性低下が関係していることもあります。

ただし、寝ると戻るから問題ない、寝ても戻らないから改善しない、という単純な判断はできません。あくまで、体の傾きの原因を考えるための一つの目安として確認しましょう。

歩行中に見る:どちらの足をついた時に傾くか

体の傾きは、静止している時よりも歩いている時に目立つことがあります。

歩行中は、左右の足に交互に体重を乗せながら進みます。そのため、片足で体を支える瞬間に、骨盤や体幹を安定させる力が必要になります。

右に傾く場合は、どちらの足をついた時に傾きが強くなるのかを確認すると、原因を考える手がかりになります。

たとえば、右足に体重を乗せた時に右へ倒れ込むように傾く場合は、右側で体を支える力や、右股関節まわりの安定性が関係している可能性があります。

一方で、左足に体重を乗せた時に体が右へ流れる場合は、左側の支える力が弱く、骨盤や体幹を保てていない可能性があります。

このように、見た目には同じ「右への傾き」でも、歩行中のどのタイミングで傾くかによって、考えられる原因が変わります。

また、歩行中の傾きは、疲労、歩幅の小ささ、方向転換、急いで歩いた時、薬の効き方などによっても変わります。普段はそれほど目立たなくても、長く歩いた後や夕方になると右に傾きやすくなることもあります。

歩行中の確認は、本人だけでは難しいことが多いため、家族に見てもらうか、短い動画を撮影して確認するとわかりやすくなります。ただし、撮影に集中して転倒しないよう、安全な場所で行うことが大切です。

家族が写真・動画で確認する時のポイント

体の傾きは、本人よりも家族の方が気づきやすいことがあります。

本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には右に傾いている場合があります。そのため、家族が写真や動画で姿勢を記録しておくと、診察やリハビリの場面で状態を伝えやすくなります。

写真を撮る場合は、正面、横、後ろの3方向から撮るとわかりやすくなります。正面からは肩や骨盤の高さ、頭の位置を確認できます。横からは前傾姿勢や腰曲がり、首下がりがないかを確認しやすくなります。後ろからは背骨の曲がりや肩甲骨、骨盤の左右差が見えやすくなります。

動画を撮る場合は、立ち上がり、立位、歩行、方向転換の様子を短く撮影するとよいでしょう。特に、歩き始め、方向転換、疲れてきた時に傾きが強くなる場合は、その場面を記録しておくと参考になります。

また、薬の効き方との関係を確認するために、薬を飲む前、薬が効いている時間帯、薬が切れかかる時間帯で傾きに違いがあるかを見ることも大切です。

ただし、写真や動画を撮る目的は、本人を責めることではありません。「傾いているから直して」と指摘し続けると、本人の不安や緊張が強くなり、かえって動きにくくなることがあります。

家族は、姿勢の変化を客観的に記録し、主治医や理学療法士に相談するための材料として活用しましょう。

体が右に傾く場合は、鏡、壁、仰向け、歩行、写真・動画を使って確認することで、どの場面で傾きが出やすいのかが見えやすくなります。自宅での確認結果をもとに、専門家と一緒に原因を整理し、適切なリハビリや生活上の工夫につなげていくことが大切です。

右に傾く時に注意したい症状と受診の目安

鏡・動画・写真を使ってパーキンソン病による体の傾きや姿勢の変化を確認する方法を説明したイラスト

パーキンソン病で体が右に傾くことは、筋肉のこわばり、筋力低下、姿勢反応の低下、ピサ症候群、薬の影響などによって起こることがあります。ただし、すべてを「パーキンソン病だから仕方ない」と考えてしまうのは注意が必要です。

体の傾きが急に強くなった場合や、痛み・しびれ・転倒を伴う場合、薬を変更した後から傾きが目立つようになった場合には、早めに主治医へ相談することが大切です。

特に、これまでと明らかに違う変化がある場合は、パーキンソン病の姿勢異常だけではなく、脳血管障害、整形外科的な問題、薬の影響なども含めて確認する必要があります。

ここでは、体が右に傾く時に注意したい症状と、受診を考える目安について整理します。

急に傾きが強くなった場合

体の右への傾きが、少しずつではなく急に強くなった場合は注意が必要です。

パーキンソン病の姿勢異常は、徐々に目立ってくることが多いですが、突然姿勢が大きく変わった場合には、別の原因が隠れている可能性もあります。

たとえば、急に右へ倒れやすくなった、歩くと右へ大きく寄ってしまう、座っていても体を保てなくなった、立ち上がった時に急にバランスを崩すようになった、という場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

特に、片側の手足に力が入りにくい、しびれがある、顔の片側が下がる、ろれつが回らない、言葉が出にくい、急にふらつきが強くなった、視界がぼやける、激しい頭痛があるといった症状を伴う場合は、緊急性が高いことがあります。

このような症状がある時は、パーキンソン病の症状と決めつけず、速やかに救急受診を検討してください。

また、高齢の方では、発熱、脱水、感染症、睡眠不足、便秘、食事量の低下などをきっかけに、一時的に動きにくさやバランスの悪さが強くなることもあります。普段より急に傾きが強い時は、全身状態の変化もあわせて確認することが大切です。

痛み・しびれ・転倒がある場合

体が右に傾くことに加えて、痛みやしびれ、転倒がある場合も注意が必要です。

腰や背中の痛みがある場合、脊柱の変形、圧迫骨折、腰椎の問題、筋肉や関節の硬さなどが関係していることがあります。痛みを避けるために無意識に体を傾けている場合もあります。

また、足のしびれや痛みがある場合は、腰椎や末梢神経の問題、股関節や膝関節の問題なども考える必要があります。パーキンソン病による姿勢異常だけでなく、整形外科的な評価が必要になることもあります。

特に、体が右に傾くようになってから転倒が増えた場合は、早めの相談が重要です。

転倒は、骨折や頭部外傷につながる可能性があります。また、一度転倒を経験すると、「また転ぶかもしれない」という不安から歩幅が小さくなり、さらにバランスを崩しやすくなることがあります。

痛みやしびれを我慢しながら無理に運動を続けると、かえって姿勢の崩れが強くなったり、別の部位に負担がかかったりすることがあります。

体の傾きに痛み・しびれ・転倒が重なっている場合は、自己判断でストレッチや筋トレを増やすのではなく、主治医、整形外科医、理学療法士に相談し、原因を確認したうえで対応することが大切です。

薬を変更した後から傾きが出た場合

薬を変更した後から体の右への傾きが出てきた場合や、以前より傾きが強くなった場合は、薬の影響も確認する必要があります。

パーキンソン病では、薬の効き方によって動きやすさ、筋肉のこわばり、姿勢、歩き方が変わることがあります。

たとえば、薬が切れかかる時間帯に体が傾きやすくなる場合があります。反対に、薬が効いている時間帯に体の動きが大きくなりすぎたり、不随意運動が出たりして、姿勢が崩れやすくなることもあります。

また、薬の種類や量が変わった後から、体幹が一方向へ引っ張られるような姿勢が目立つこともあります。

このような場合に大切なのは、自己判断で薬を中止したり、量を変えたりしないことです。

パーキンソン病の薬は、急に中止したり、飲み方を大きく変えたりすると、動きにくさが強くなるだけでなく、体調に大きな影響を与えることがあります。薬に関係しているかもしれないと思った場合は、必ず主治医に相談しましょう。

受診時には、傾きが出る時間帯を具体的に伝えると役立ちます。

たとえば、薬を飲む前に強いのか、薬を飲んで何時間後に強いのか、朝と夕方で違うのか、疲れてくると強くなるのかをメモしておくと、薬効との関係を考えやすくなります。

可能であれば、傾きが強い時の写真や動画を家族に撮ってもらい、診察時に見てもらうと状態を伝えやすくなります。

自分では傾きに気づきにくいことがある

体が右に傾いていても、本人はその変化に気づきにくいことがあります。

パーキンソン病では、本人が「まっすぐ立っている」と感じていても、実際には右や左に傾いていることがあります。これは、体の位置を感じ取る感覚や、まっすぐを判断する感覚がずれていることがあるためです。

そのため、家族から「右に傾いているよ」と言われても、本人には自覚がないことがあります。場合によっては、まっすぐに直された姿勢の方が、かえって傾いているように感じることもあります。

これは本人の努力不足や注意不足ではありません。

体の感覚と実際の姿勢にずれが生じているため、本人だけで気づくのが難しい場合があります。

このような時は、鏡、写真、動画などを使って、客観的に姿勢を確認することが役立ちます。家族が確認する場合は、責めるように指摘するのではなく、「最近、歩いている時に少し右に寄りやすいかもしれないね」「動画を撮って先生に見てもらおうか」というように、相談につなげる形で声をかけるとよいでしょう。

また、本人が自覚していない傾きでも、転倒や腰痛、歩行距離の低下につながることがあります。自覚がないから問題ないと考えるのではなく、姿勢の変化に早めに気づき、専門家に相談することが大切です。

体の傾きは、早い段階で原因を確認できれば、リハビリや生活上の工夫につなげやすくなります。本人と家族が一緒に変化を確認し、必要に応じて主治医や理学療法士に相談しましょう。

まとめ:パーキンソン病で右に傾く原因は一つではない

パーキンソン病で体が右に傾く原因は、一つではありません。

右側の筋肉が硬くなって右へ引っ張られている場合もあれば、反対側である左側の筋力が低下して、体を支え戻す力が弱くなっている場合もあります。また、体幹筋の左右差、股関節まわりの筋力低下、まっすぐを感じる感覚のずれ、薬の影響、背骨や骨盤の変形、腰痛などが関係していることもあります。

そのため、「右に傾く=右側だけが悪い」と単純に考えるのではなく、体全体のバランスを見て原因を整理することが大切です。

特に、パーキンソン病では、立っている時や歩いている時に体が横へ傾きやすくなることがあります。このような姿勢異常は、ピサ症候群と呼ばれることもあります。ただし、体が横に傾いているからといって、すべてがピサ症候群とは限りません。側弯症、腰曲がり、前傾姿勢、首下がりなど、他の姿勢異常が重なっている場合もあります。

自宅で確認する場合は、鏡で肩・骨盤・頭の位置を見る、壁に背中をつけて左右差を確認する、仰向けで寝た時に傾きが戻るかを見る、歩行中にどちらの足をついた時に傾くかを確認する、といった方法があります。

また、家族が写真や動画で姿勢や歩き方を記録しておくと、診察やリハビリの場面で状態を伝えやすくなります。本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には右に傾いていることがあるため、客観的に確認することも大切です。

一方で、急に傾きが強くなった場合、痛みやしびれを伴う場合、転倒が増えている場合、薬を変更した後から傾きが目立つようになった場合は、自己判断せず、早めに主治医へ相談しましょう。

体の傾きは、早い段階で原因を確認できれば、リハビリや生活上の工夫につなげやすくなります。まずは「なぜ右に傾いているのか」を整理し、そのうえで、原因に合わせたストレッチ、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習を組み合わせていくことが大切です。

パーキンソン病で体が右に傾く原因を理解できたら、次に大切なのは、原因に合わせたリハビリを行うことです。具体的な運動や自主トレの考え方については、関連記事「パーキンソン病で右に傾く時のリハビリ」で詳しく解説します。

 

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