パーキンソン病とは?原因・症状・治療・リハビリまで理学療法士がわかりやすく解説

目次
パーキンソン病とは
パーキンソン病とは、脳の中で体の動きを調整する働きを担う神経細胞が少しずつ減少し、「動き」にさまざまな影響が現れる進行性の病気です。主に50〜70歳代で発症することが多く、日本では高齢化に伴い患者数も増加しています。
この病気では、脳内で「ドパミン」という神経伝達物質が不足することによって、体をスムーズに動かすことが難しくなります。その結果、歩きにくい、動作がゆっくりになる、手足が震える、筋肉がこわばるといった症状が現れることがあります。
一方で、パーキンソン病の症状や進行のスピードは人それぞれ異なります。診断されたからといって、すぐに歩けなくなったり寝たきりになったりするわけではありません。適切な薬物療法やリハビリ、運動療法を継続することで、長く自分らしい生活を送っている方も多くいらっしゃいます。
近年では、「運動を継続すること」が身体機能や生活の質(QOL)の維持につながることが多くの研究で報告されており、薬による治療だけでなく、日常生活の中で体を動かし続けることの重要性が広く知られるようになっています。
この記事では、パーキンソン病の原因や症状、治療方法、リハビリについて、理学療法士の視点からできるだけ分かりやすく解説します。不安や疑問を少しでも解消し、今後の生活や治療の参考になれば幸いです。
パーキンソン病の原因
パーキンソン病の原因は、現在も研究が進められていますが、一つの原因だけで発症する病気ではないと考えられています。加齢や遺伝的な要因に加え、環境要因などが複雑に関係して発症すると考えられています。
パーキンソン病では、脳の「黒質(こくしつ)」と呼ばれる部分にある神経細胞が徐々に減少していきます。この神経細胞は、「ドパミン」という神経伝達物質を作る役割を担っています。
ドパミンは、脳の中で運動を調整する神経回路がスムーズに働くために重要な神経伝達物質です。ドパミンが不足すると、動作の開始や切り替えが難しくなり、動作の遅さや歩きにくさ、筋肉のこわばりなどが現れます。このドパミンが不足すると、体を思い通りに動かしにくくなり、歩きにくさや動作の遅さ、手足の震え、筋肉のこわばりなど、パーキンソン病に特徴的な症状が現れます。
また、近年の研究では、神経細胞の中に「α(アルファ)シヌクレイン」というたんぱく質が異常に蓄積し、「レビー小体」と呼ばれる構造が形成されることが、神経細胞の障害に関係していると考えられています。ただし、なぜこの異常が起こるのかについては、まだ完全には解明されていません。
なお、ご家族の中にパーキンソン病の方がいると、「遺伝する病気なのでは?」と心配される方もいらっしゃいます。しかし、多くのパーキンソン病は遺伝だけが原因ではなく、遺伝性とされるものは一部に限られます。そのため、「家族に患者さんがいるから必ず発症する」というわけではありません。
現在も世界中で研究が進められており、発症の仕組みや新しい治療法の開発が期待されています。
主な症状

パーキンソン病では、症状の現れ方や進行のスピードには個人差があります。しかし、多くの方に共通してみられる代表的な症状として、「動作緩慢(どうさかんまん)」「振戦(しんせん)」「筋強剛(きんきょうごう)」「姿勢保持障害」の4つが知られています。
動作緩慢(動きがゆっくりになる)
動作緩慢とは、体を動かすスピードが遅くなる症状です。
歩き始めるまでに時間がかかったり、歩幅が小さくなったり、寝返りや立ち上がりに時間がかかるようになります。また、字が小さくなる(小字症)、表情が乏しくなる(仮面様顔貌)、まばたきが少なくなるなども特徴的な症状です。
振戦(手足の震え)
振戦とは、自分の意思とは関係なく手や足が震える症状です。
特に安静にしているときに震えやすく、「安静時振戦」と呼ばれます。一方で、物を持ったり動作を始めたりすると震えが軽くなることもあります。
すべての患者さんに振戦が現れるわけではなく、震えがほとんどみられない方もいます。
筋強剛(筋肉がこわばる)
筋強剛とは、筋肉が硬くなり、関節を動かしにくくなる症状です。
肩こりや腰痛として始まることもあり、「最近体が硬くなった」「腕が振りにくい」と感じる方も少なくありません。
筋肉がこわばることで歩幅が狭くなったり、姿勢が前かがみになったりする原因にもなります。
姿勢保持障害(バランスが取りにくくなる)
病気が進行すると、姿勢を保つ力が低下し、バランスを崩しやすくなることがあります。
つまずきや転倒のリスクが高くなるため、日常生活では十分な注意が必要です。
特に方向転換や狭い場所での歩行、急いで歩こうとしたときなどに転倒しやすくなる傾向があります。
運動症状以外の症状(非運動症状)
パーキンソン病では、体を動かしにくくなる症状だけでなく、「非運動症状」と呼ばれる症状が現れることもあります。
代表的なものとして、
- 便秘
- 睡眠障害
- 嗅覚の低下
- 疲れやすさ
- 抑うつ
- 不安
- 血圧が下がりやすい(起立性低血圧)
などがあります。
これらの症状は運動症状よりも早い時期から現れることもあり、生活の質(QOL)に大きく影響します。
パーキンソン病は「手足が震える病気」というイメージを持たれがちですが、実際には運動症状と非運動症状の両方を理解し、適切に対応していくことが大切です。
「症状があるから運動できない」のではなく、症状に合わせて適切な運動を継続することが、生活機能の維持につながる可能性があります。
どのように診断されるのか
パーキンソン病は、血液検査だけで診断できる病気ではありません。そのため、医師は症状や診察結果、画像検査などを総合的に判断して診断を行います。
まず、診察では「いつ頃から症状が現れたか」「どのような動作で困っているか」などを詳しく確認します。また、歩き方や姿勢、手足の動き、筋肉のこわばり、震えの有無などを診察し、パーキンソン病に特徴的な症状があるかを評価します。
さらに、必要に応じてMRIやCT検査を行います。これらの検査はパーキンソン病そのものを診断するためというよりも、脳梗塞や脳腫瘍、水頭症など、似た症状を引き起こす他の病気を除外する目的で行われます。
場合によっては、ドパミントランスポーターシンチグラフィ(DATスキャン)などの画像検査が行われることもあります。この検査では、脳内のドパミン神経の働きを調べることで、診断の参考となる情報が得られます。ただし、すべての医療機関で実施されるわけではありません。
また、パーキンソン病では、ドパミンを補う薬(レボドパ製剤など)を服用した際に症状が改善するかどうかも、診断の参考になります。
パーキンソン病と似た症状を示す病気には、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)などの「パーキンソン症候群」があります。これらは治療や経過が異なるため、正確に見分けることが重要です。
診断が難しい場合には、一定期間経過をみながら症状の変化を確認し、診断が確定することもあります。そのため、「すぐに診断がつかなかったからパーキンソン病ではない」というわけではありません。気になる症状がある場合は、脳神経内科などの専門医を受診し、継続的に診てもらうことが大切です。
診断が確定する前の段階でも、転倒予防や運動習慣づくりなど、生活機能を維持するための取り組みを始めることは重要です。早期から適切な運動を継続することで、日常生活を送りやすくなる可能性があります。
治療方法
現在のところ、パーキンソン病を完全に治す治療法は確立されていません。しかし、薬物療法やリハビリテーション、生活習慣の工夫などを組み合わせることで、症状をコントロールしながら生活の質(QOL)を維持することが期待できます。
薬物療法
パーキンソン病の治療では、ドパミン不足を補うことを目的とした薬物療法が基本となります。
代表的な薬には「レボドパ製剤」や「ドパミンアゴニスト」などがあり、年齢や症状、生活スタイルなどを考慮しながら、一人ひとりに合わせて処方されます。
薬によって動きやすさが改善する一方で、長期間服用することで効果の持続時間が短くなったり、不随意運動(ジスキネジア)などの副作用が現れたりすることもあります。そのため、定期的に主治医と相談しながら治療を続けることが大切です。
外科的治療
薬だけでは症状のコントロールが難しい場合には、「脳深部刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)」などの外科的治療が選択されることがあります。
DBSは、脳の特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激によって症状の改善を目指す治療法です。すべての患者さんが対象になるわけではなく、専門医による十分な評価のもとで適応が判断されます。
リハビリテーション・運動療法
近年、パーキンソン病の治療では、薬物療法と並んでリハビリテーションや運動療法の重要性が広く認識されています。
適切な運動を継続することで、歩行やバランス能力、筋力、柔軟性などの維持・改善が期待でき、転倒予防や日常生活動作の維持にもつながります。
また、運動には身体機能だけでなく、気分転換や活動量の維持、社会参加の促進など、生活全体に良い影響を与える可能性があります。
治療は「続けること」が大切
パーキンソン病は長く付き合っていく病気だからこそ、「どの治療を選ぶか」だけでなく、「どのように継続していくか」が重要です。
薬物療法だけに頼るのではなく、医師や理学療法士、作業療法士などの専門職と連携しながら、自分の状態に合った治療や運動を無理なく続けることが、生活機能の維持につながります。
私たちは、「治療を受ける」だけではなく、「自分の力を引き出す」こともパーキンソン病の治療の一つだと考えています。適切な運動を継続し、自分らしい生活を少しでも長く続けられるよう支援することが、リハビリテーションの大きな役割です。
リハビリ・運動療法が重要な理由

パーキンソン病の治療では、薬物療法だけでなく、リハビリテーションや運動療法を継続することが非常に重要です。
近年では、適切な運動を続けることが、歩行能力やバランス能力、筋力、柔軟性などの維持・改善につながることが、多くの研究で報告されています。そのため、国内外の診療ガイドラインでも、運動療法は薬物療法と並ぶ重要な治療の一つとして位置づけられています。
パーキンソン病では、病気そのものによる症状だけでなく、「動きにくいから動かない」という生活が続くことで、筋力や体力の低下、関節の硬さ、バランス能力の低下などが進みやすくなります。これにより、転倒しやすくなったり、日常生活でできることが少しずつ減ってしまったりする可能性があります。
だからこそ、無理のない範囲で体を動かし続けることが大切です。
リハビリでは、一人ひとりの症状や生活環境に合わせて、歩行練習やバランス練習、筋力トレーニング、柔軟性を高める運動などを組み合わせながら進めていきます。また、自宅でも続けられる運動を取り入れることで、日常生活の中で活動量を維持しやすくなります。
さらに、運動には身体機能だけでなく、気分転換やストレスの軽減、自信の回復、社会参加の促進など、心の健康にも良い影響が期待されています。
ただし、「たくさん運動すれば良い」というわけではありません。症状や体力に合わない運動は、転倒や疲労につながることもあります。そのため、理学療法士などの専門家と相談しながら、自分に合った運動を継続することが大切です。
パーキンソン病と診断されても、「好きなことを続けたい」「旅行に行きたい」「趣味を楽しみたい」という目標を持つことは決して特別なことではありません。その目標を実現するための土台となるのが、日々のリハビリと運動療法です。
リハビリは、「失った機能を取り戻すため」だけのものではありません。これからも自分らしい生活を送り続けるための、大切な未来への投資でもあります。
日常生活で気を付けたいこと
パーキンソン病と診断されても、すぐに今までの生活を大きく変える必要はありません。しかし、病気と上手に付き合っていくためには、日常生活の中でいくつか意識しておきたいポイントがあります。
体を動かす習慣を続ける
パーキンソン病では、「動きにくいから動かない」という生活が続くと、筋力や体力の低下、関節の硬さ、バランス能力の低下につながりやすくなります。
ウォーキングや体操、ストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣を続けることが大切です。毎日少しずつでも継続することが、身体機能の維持につながります。
転倒を予防する環境を整える
転倒は骨折や入院の原因となることがあるため、日頃から予防することが重要です。
例えば、
- 床に物を置かない
- 滑りやすいマットを使用しない
- 十分な明るさを確保する
- 手すりを活用する
など、自宅の環境を見直すだけでも転倒リスクを減らすことができます。
薬を正しく服用する
薬は決められた時間に服用することが大切です。
服薬時間がずれると、薬の効果が十分に得られず、「動きにくい時間」が長くなることがあります。自己判断で薬を中止したり量を変更したりせず、気になることがあれば主治医へ相談しましょう。
一人で悩まない
パーキンソン病は長く付き合っていく病気です。
不安や悩みを抱え込まず、家族や主治医、理学療法士、作業療法士などの専門職へ相談することも大切です。同じ病気の方との交流会や患者会に参加することで、新しい情報や前向きな気持ちを得られることもあります。
「できること」を続ける
病気になると、「できなくなったこと」に目が向きがちです。しかし、今できることや好きなことを続けることは、身体だけでなく心の健康にも良い影響を与えます。
旅行に行くこと、趣味を楽しむこと、家族や友人と外出することなど、自分らしい生活を大切にしながら過ごすことが、生活の質(QOL)の維持につながります。
パーキンソン病とともに生活していくうえで大切なのは、「無理をすること」ではなく、「自分に合った方法で続けること」です。医療やリハビリの専門家の力も借りながら、一歩ずつ前向きに取り組んでいきましょう。
「昨日より少し歩けた」「趣味を楽しめた」「家族と外出できた」。そんな小さな積み重ねが、自分らしい人生を長く続けるための大きな力になります。
よくある質問
Q. パーキンソン病は治りますか?
現在のところ、パーキンソン病を完全に治す治療法は確立されていません。しかし、薬物療法やリハビリテーション、運動療法を組み合わせることで、症状をコントロールしながら生活の質(QOL)を維持することが期待できます。
Q. パーキンソン病になると歩けなくなりますか?
必ず歩けなくなるわけではありません。
症状の進行には個人差があり、適切な治療や運動を継続することで、長く歩行能力を維持しながら生活している方も多くいらっしゃいます。
Q. パーキンソン病は遺伝しますか?
多くのパーキンソン病は遺伝だけが原因ではありません。
一部に遺伝性のタイプがありますが、ご家族に患者さんがいるからといって必ず発症するわけではありません。不安な場合は、主治医へ相談することをおすすめします。
Q. 運動は毎日行った方が良いですか?
無理のない範囲で、継続的に体を動かすことが大切です。
症状や体力に合わせて、ウォーキングやストレッチ、バランス練習などを生活の中に取り入れることで、身体機能の維持につながることが期待できます。
Q. 仕事や趣味は続けられますか?
症状や仕事内容によって異なりますが、多くの方が仕事や趣味を続けながら生活されています。
病気があるからといって、すぐにこれまでの生活を諦める必要はありません。必要に応じて環境を調整しながら、自分らしい生活を続けていくことが大切です。
Q. どの診療科を受診すればよいですか?
手足の震えや歩きにくさ、動作の遅さなどが気になる場合は、脳神経内科の受診をおすすめします。
早期に診断を受け、適切な治療やリハビリテーションを開始することで、症状のコントロールや生活機能の維持につながる可能性があります。
Q. リハビリはいつから始めた方が良いですか?
診断されたできるだけ早い時期から始めることが望ましいと考えられています。
「まだ症状が軽いから必要ない」と考える方もいますが、早期から適切な運動習慣を身につけることで、身体機能や日常生活を維持しやすくなる可能性があります。症状が軽いうちから、ご自身に合った運動方法を知っておくことが大切です。
まとめ
パーキンソン病は、脳内のドパミンが不足することで、歩きにくさや動作の遅さ、筋肉のこわばりなどが現れる進行性の病気です。しかし、適切な薬物療法やリハビリテーション、運動療法を継続することで、症状とうまく付き合いながら、自分らしい生活を続けている方も多くいらっしゃいます。
大切なのは、「病気だから何もできない」と考えるのではなく、「今できること」を一つずつ積み重ねていくことです。
運動を続けること、転倒を予防すること、趣味や外出を楽しむこと、ご家族や医療・介護の専門職と協力しながら生活すること。その一つひとつが、生活の質(QOL)の維持につながります。
パーキンソン病との向き合い方に正解はありません。だからこそ、自分の身体の状態を理解し、自分に合った治療や運動を継続することが何より大切です。
AXIS PROJECTでは、「動ける喜びを、いつまでも」という理念のもと、パーキンソン病のある方が安心して運動を続けられる環境づくりを目指しています。
この記事が、パーキンソン病について正しく理解し、これからの生活を前向きに考えるきっかけになれば幸いです。

