パーキンソン病で右に傾く時のリハビリ|姿勢を整える運動と自主トレの注意点

パーキンソン病で右に傾くときのリハビリ

パーキンソン病専門AXISプロジェクト代表の理学療法士井上です。

今回の記事は、よくご質問のある「体が傾いてしまうのはなぜ?」に対して、リハビリの内容を解説をしていきます。

【前回の記事】
パーキンソン病で体が右に傾く原因とは?ピサ症候群・姿勢異常の見分け方を理学療法士が解説

パーキンソン病の右への傾きに対するリハビリの考え方

パーキンソン病で体が右に傾く場合、リハビリでは「右に傾いている姿勢を無理にまっすぐ直す」ことだけを目的にするのではありません。

大切なのは、なぜ右に傾いているのかを整理したうえで、その原因に合わせて、ストレッチ、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習を組み合わせることです。

体が右に傾く背景には、筋肉のこわばり、体幹や股関節まわりの筋力低下、まっすぐを感じる感覚のずれ、薬の効き方、脊柱や骨盤の変形、痛みなどが関係していることがあります。

そのため、同じ「右への傾き」でも、必要なリハビリは人によって異なります。

たとえば、右側の体幹が硬くなって右へ引っ張られている方と、左側の中殿筋や体幹筋が弱くなって右へ流れている方では、重点的に行う運動が変わります。また、本人がまっすぐ立っているつもりでも実際には右に傾いている場合は、姿勢感覚を再学習する練習も必要になります。

ここでは、パーキンソン病で体が右に傾く時のリハビリの考え方について、原因別に整理して解説します。

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まずは原因を分けて考えることが大切

パーキンソン病で体が右に傾く場合、最初に大切なのは「何が原因で傾いているのか」を分けて考えることです。

右に傾いているからといって、単純に右側を鍛えればよい、右側を伸ばせばよい、というわけではありません。

体が右に傾く場合でも、右側の体幹や腰まわりが硬くなって右へ引っ張っていることがあります。一方で、反対側である左側の体幹筋や中殿筋が弱くなり、体を左方向へ支え戻す力が不足していることもあります。

また、筋肉や関節だけでなく、体のまっすぐを感じる感覚がずれている場合もあります。この場合、本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には右へ傾いていることがあります。

さらに、薬の効き方によって傾きが変わる方もいます。薬が切れかかる時間帯に傾きやすい場合もあれば、薬が効いている時間帯に不随意運動や姿勢の崩れが目立つ場合もあります。

そのため、リハビリではまず、以下のような点を確認します。

  • 立っている時に傾くのか
  • 歩いている時に傾くのか
  • 座っていても傾くのか
  • 仰向けで寝ると戻るのか
  • どちら側の筋肉が硬いのか
  • どちら側の筋力が弱いのか
  • 痛みやしびれがあるのか
  • 薬の時間帯によって変化するのか

このように原因を分けて考えることで、リハビリの方向性が見えやすくなります。

体の傾きは、見た目だけでは原因を判断しにくいことがあります。だからこそ、姿勢、歩行、筋力、柔軟性、感覚、痛み、薬の影響を総合的に確認することが大切です。

硬い側をゆるめるストレッチ

パーキンソン病の硬い側をゆるめるストレッチ

体が右に傾く原因の一つに、体幹や股関節まわりの筋肉の硬さがあります。

たとえば、右側の脇腹、腰まわり、骨盤まわりの筋肉が硬くなっていると、体が右へ引っ張られるように傾くことがあります。また、胸郭や背骨の動きが小さくなると、体を反対側へ戻す動きも出しにくくなります。

このような場合、リハビリでは硬くなっている側をゆっくり動かし、体幹や骨盤の柔軟性を高めることを目指します。

ただし、ストレッチは「強く伸ばせばよい」というものではありません。

パーキンソン病では筋肉のこわばりがあるため、無理に伸ばすと痛みが出たり、かえって体に力が入りやすくなったりすることがあります。特に腰痛や脊柱変形がある方では、強いストレッチによって負担が増えることもあります。

そのため、ストレッチでは、痛みのない範囲で、呼吸を止めずに、ゆっくり行うことが大切です。

右側が硬くて右に傾いている場合は、右の脇腹や腰まわりをゆるめるような体幹の側屈運動、胸郭を広げる運動、骨盤を左右へ動かす運動などが選択されることがあります。

一方で、左側が硬くなって体の動きが制限され、結果的に右へ流れている場合もあります。そのため、どちら側を伸ばすべきかは、実際の動きや姿勢を見ながら判断する必要があります。

ストレッチの目的は、無理に姿勢をまっすぐに固定することではありません。左右どちらにも動ける体をつくり、立位や歩行の中で体幹をコントロールしやすくすることです。

弱い側を補う筋力トレーニング

パーキンソン病の弱い側を補う筋トレ方法

体が右に傾く場合、筋肉の硬さだけでなく、筋力低下も重要な原因になります。

特に関係しやすいのが、体幹の横側の筋肉や、股関節まわりの筋肉です。その中でも中殿筋は、立っている時や歩いている時に骨盤を安定させる重要な筋肉です。

歩く時には、片足で体を支える瞬間があります。この時、中殿筋や体幹筋がうまく働かないと、骨盤が傾いたり、体幹が横へ流れたりしやすくなります。

たとえば、左側の中殿筋や体幹筋が弱い場合、左足で体を支える時に骨盤が安定せず、体が右へ流れるように傾くことがあります。反対に、右側の支える力が弱い場合は、右足に体重を乗せた時に右へ倒れ込むような歩き方になることもあります。

このように、右に傾いているからといって、必ず右側だけを鍛えるわけではありません。

リハビリでは、どちらの足で支えた時に傾きが強くなるのか、どちらの股関節まわりが弱いのか、体幹をどちら方向へ戻す力が不足しているのかを確認しながら、筋力トレーニングを行います。

具体的には、股関節を横に開く運動、横向きで脚を上げる運動、立った状態で左右へ体重を移動する運動、手すりを使った片脚支持の練習などが行われることがあります。

ただし、バランスが不安定な方が一人で片脚立ちや横歩きの練習を行うと、転倒の危険があります。筋力トレーニングは、手すりや壁を使い、安全を確保したうえで行うことが大切です。

筋力トレーニングの目的は、単に筋肉を強くすることではありません。立位や歩行の中で、骨盤と体幹を安定させ、右への傾きを減らすために必要な筋肉を使いやすくすることです。

まっすぐを再学習するバランス練習

パーキンソン病で真っ直ぐを再学習するバランス歩行練習イラストパーキンソン病で真っ直ぐを再学習するバランス歩行練習イラスト

パーキンソン病で体が右に傾く場合、筋肉の硬さや筋力低下だけでなく、「まっすぐの感覚」がずれていることがあります。

本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には右に傾いている。家族から「右に傾いているよ」と言われても、自分ではあまり実感がない。このようなことは少なくありません。

これは、体の位置を感じ取る感覚や、姿勢を修正する反応がうまく働きにくくなっている可能性があります。

このような場合、リハビリでは「まっすぐを再学習する練習」が重要になります。

まずは、鏡を使って自分の姿勢を確認します。肩の高さ、頭の位置、骨盤の傾きなどを見ながら、実際の姿勢と自分の感覚のずれを確認します。

次に、壁や手すりを使って、体の中心を感じる練習を行います。たとえば、左右へゆっくり体重を移動しながら、どこが中心なのかを探す練習です。

この時に大切なのは、最初から完璧にまっすぐ立とうとしすぎないことです。

右に傾いた姿勢に慣れている方にとって、本当のまっすぐは、最初は左に傾いているように感じることがあります。そのため、鏡や動画、理学療法士の声かけなどを使いながら、少しずつ実際の姿勢と体の感覚を合わせていきます。

また、バランス練習では、前後左右への重心移動、立ち上がり、方向転換、片足への体重移動などを組み合わせることがあります。

パーキンソン病では、姿勢を保つ反応が遅れやすくなることがあるため、静止した姿勢だけでなく、動きの中で姿勢を整える練習も大切です。

まっすぐを再学習する練習は、筋トレやストレッチだけでは補いにくい部分です。体の感覚を整えながら、実際の生活動作に近い形で練習していくことが重要です。

歩行時の傾きを減らす練習

体が右に傾く方では、立っている時よりも、歩いている時に傾きが目立つことがあります。

歩行中は、左右の足に交互に体重を乗せながら進みます。そのため、骨盤や体幹を安定させる力、左右への重心移動、足を出すタイミング、歩幅、方向転換のしやすさなどが関係します。

パーキンソン病では、歩幅が小さくなったり、足がすくんだり、方向転換が苦手になったりすることがあります。その結果、体幹をまっすぐ保つ余裕が少なくなり、右へ傾いた姿勢のまま歩いてしまうことがあります。

歩行時の傾きを減らすためには、まず「いつ傾くのか」を確認することが大切です。

歩き始めに右へ傾くのか、右足に体重を乗せた時に傾くのか、左足に体重を乗せた時に右へ流れるのか、方向転換で崩れるのか、疲れてくると強くなるのかによって、練習内容が変わります。

リハビリでは、歩行中の姿勢を動画で確認したり、鏡の前で歩いたり、理学療法士が体幹や骨盤の動きを見ながら練習を行います。

また、床の線、メトロノーム、声かけ、目標物などの外的手がかりを使うことで、歩幅や姿勢が整いやすくなる場合があります。たとえば、「少し大きく一歩を出す」「目線を上げる」「線に沿って歩く」「左右に流れすぎないように歩く」といった練習です。

ただし、姿勢を意識しすぎるあまり、足が出にくくなったり、動きがぎこちなくなったりする場合もあります。そのため、歩行練習では、姿勢だけでなく、歩きやすさ、スピード、転倒リスク、疲労感もあわせて確認します。

歩行時の傾きを減らす目的は、見た目をきれいにすることだけではありません。歩きやすくすること、転倒を予防すること、外出や日常生活を続けやすくすることが大切です。

代償動作を避けるため専門家の確認が重要

体が右に傾く場合、自己流で運動を行うと、かえって別の動きで補ってしまうことがあります。

これを代償動作といいます。

たとえば、体幹をまっすぐにしようとして腰を反りすぎる、右への傾きを直そうとして肩だけを持ち上げる、股関節を使うべき運動で腰をひねってしまう、片脚で支える練習の時に体を大きく横へ逃がしてしまう、といったことがあります。

本人は正しく運動しているつもりでも、実際には目的の筋肉が働いていなかったり、腰や膝に負担がかかっていたりすることがあります。

特にパーキンソン病では、動作が小さくなりやすい一方で、姿勢を修正しようとすると過剰に力が入ることもあります。そのため、運動の量だけでなく、どのように動いているかを確認することが大切です。

理学療法士は、姿勢の傾きだけでなく、筋肉の硬さ、筋力、柔軟性、バランス、歩行、痛み、薬の効き方などを確認しながら、運動内容を調整します。

また、自宅で行う自主トレについても、どの運動を、どのくらいの回数で、どの範囲まで行うのかを確認しておくことが重要です。

痛みを我慢して行う運動や、転倒リスクの高い運動を一人で続けることは避けましょう。特に、体の傾きが急に強くなった場合、腰痛やしびれがある場合、転倒が増えている場合、薬を変更してから傾きが出てきた場合は、早めに主治医や理学療法士に相談することが大切です。

リハビリは、ただ運動メニューをこなすことではありません。

体が右に傾く原因を整理し、必要な運動を選び、安全に実施し、生活の中で使える動きにつなげていくことが大切です。

パーキンソン病の右への傾きに対するリハビリでは、ストレッチ、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習を組み合わせながら、その方に合った方法で進めていくことが重要です。

自主トレでやってよいこと・避けたいこと

パーキンソン病で体が右に傾く場合、自宅での自主トレは大切です。

リハビリの時間だけで姿勢や歩き方を変えるのは難しいため、日常生活の中で、少しずつ体を動かす習慣を作ることが重要になります。

ただし、自主トレは「たくさんやればよい」「強く伸ばせばよい」「傾いている側だけ鍛えればよい」というものではありません。

体が右に傾く原因は、筋肉の硬さ、筋力低下、バランス感覚のずれ、薬の効き方、背骨や骨盤の変形、痛みなど、人によって異なります。そのため、原因に合っていない運動を続けると、かえって痛みが出たり、代償動作が強くなったり、転倒リスクが高くなったりすることがあります。

自主トレで大切なのは、無理なく、安全に、継続できる範囲で行うことです。

ここでは、パーキンソン病で体が右に傾く方が自主トレを行う時に、やってよいことと避けたいことについて整理します。

無理にまっすぐ伸ばそうとしすぎない

体が右に傾いていると、「とにかくまっすぐにしなければ」と考えてしまうかもしれません。

しかし、自主トレで無理に体をまっすぐ伸ばそうとしすぎるのは注意が必要です。

右に傾いた姿勢が長く続いている場合、体はその姿勢に慣れていることがあります。本人にとっては、右に傾いた姿勢が「楽な姿勢」になっていることもあります。その状態から急にまっすぐにしようとすると、腰や背中、股関節まわりに負担がかかることがあります。

また、パーキンソン病では、本人がまっすぐ立っているつもりでも、実際には体が傾いていることがあります。反対に、本当にまっすぐに近い姿勢をとると、本人には「逆に傾いている」と感じられる場合もあります。

そのため、自主トレでは、いきなり完璧な姿勢を目指すのではなく、鏡や壁、写真、動画などを使いながら、少しずつ自分の姿勢に気づくことが大切です。

たとえば、鏡の前で肩の高さや頭の位置を確認する、壁に背中をつけて左右差を感じる、座った状態で体を左右へゆっくり動かす、といった方法があります。

この時の目的は、無理やり体を固定することではありません。

「自分の体がどちらに傾きやすいのか」「どこまでなら楽に戻せるのか」「どの動きで突っ張りや痛みが出るのか」を確認することです。

まっすぐを目指すことは大切ですが、無理に形だけを整えようとすると、腰を反りすぎる、肩に力が入る、膝を突っ張る、呼吸が止まるといった代償動作が出ることがあります。

自主トレでは、完璧な姿勢よりも、痛みなく、呼吸ができて、安定して保てる姿勢を目指しましょう。

痛みを我慢してストレッチしない

体が右に傾く場合、体幹や腰まわりの筋肉が硬くなっていることがあります。そのため、ストレッチは有効なことがあります。

ただし、痛みを我慢してストレッチを行うのは避けましょう。

「硬いから強く伸ばした方がよい」「痛いくらい伸ばさないと効果がない」と考えてしまう方もいますが、これはおすすめできません。

痛みを我慢して伸ばすと、筋肉が防御的に緊張し、かえって硬くなることがあります。また、腰痛や背骨の変形、圧迫骨折、股関節や膝の問題がある場合、強いストレッチによって症状が悪化する可能性もあります。

特にパーキンソン病の方では、筋肉のこわばりがあるため、急に強く伸ばすと体に力が入りやすくなります。ストレッチのつもりが、実際には体を緊張させてしまっていることもあります。

ストレッチを行う時は、痛みのない範囲で、ゆっくり呼吸をしながら行うことが大切です。

目安としては、「気持ちよく伸びている」「少し突っ張るけれど痛みはない」程度にとどめます。鋭い痛み、しびれ、腰や背中への強い違和感がある場合は、その運動は中止しましょう。

また、ストレッチ中だけでなく、終わった後の状態も大切です。

ストレッチ後に体が軽くなる、動きやすくなる、姿勢が少し整う感覚がある場合は、その運動が合っている可能性があります。一方で、ストレッチ後に痛みが増える、疲労感が強い、歩きにくくなる、傾きが強くなる場合は、方法や強さが合っていない可能性があります。

ストレッチは、体を無理に伸ばすためではなく、動きやすい範囲を少しずつ広げるために行います。

痛みを我慢する自主トレではなく、「安全に続けられる自主トレ」を選ぶことが大切です。

片側だけ鍛えればよいとは限らない

体が右に傾いていると、「右側が弱いのではないか」「右側だけ鍛えればよいのではないか」と考えやすいかもしれません。

しかし、実際には片側だけ鍛えればよいとは限りません。

体が右に傾く場合でも、原因は人によって異なります。右側の体幹や腰まわりが硬くなって右へ引っ張っている場合もあれば、左側の体幹筋や中殿筋が弱くなり、体を左へ戻す力が不足している場合もあります。

また、右足で支える時に右へ倒れ込む方もいれば、左足で支える時に体が右へ流れる方もいます。見た目には同じ「右への傾き」でも、必要な筋力トレーニングは異なることがあります。

そのため、自己判断で右側だけを鍛え続けると、かえって左右差が強くなったり、姿勢のバランスが崩れたりすることがあります。

たとえば、本来は左側の支える力を高める必要があるのに、右側ばかり鍛えてしまうと、歩行時の左右差が改善しにくいことがあります。反対に、右側の硬さが強い方が、右側に力を入れる運動ばかり行うと、さらに体が右へ引っ張られやすくなる場合もあります。

筋力トレーニングでは、「どちら側を鍛えるか」だけでなく、「どの動きの中で使えるようにするか」が重要です。

中殿筋や体幹筋を鍛える場合も、単に筋肉を強くするだけでなく、立っている時、片足に体重を乗せる時、歩いている時に使えるようにしていく必要があります。

自主トレでは、左右どちらか一方に偏りすぎず、体幹、骨盤、股関節、足のつき方を全体として整える意識が大切です。

もし「どちら側を鍛えればよいかわからない」「運動すると余計に傾く気がする」という場合は、理学療法士に姿勢や歩行を確認してもらうことをおすすめします。

転倒リスクがある運動は一人で行わない

パーキンソン病で体が右に傾く方は、バランスが不安定になっていることがあります。そのため、自主トレを行う時は、転倒予防を最優先に考える必要があります。

特に注意したいのは、片脚立ち、横歩き、方向転換、後ろ歩き、段差昇降、目を閉じて行うバランス練習などです。

これらの運動は、リハビリとして有効な場合もありますが、転倒リスクもあります。バランスが不安定な方が一人で行うと、ふらついた時に支えきれず、転倒につながる可能性があります。

転倒すると、骨折や頭部外傷につながることがあります。また、一度転倒を経験すると、転倒への不安が強くなり、歩幅が小さくなったり、外出を控えるようになったりすることがあります。その結果、筋力やバランス能力がさらに低下する悪循環につながることもあります。

自主トレを行う時は、まず安全な環境を整えましょう。

手すりや壁の近くで行う、床に物を置かない、滑りにくい靴や靴下を選ぶ、疲れている時や薬が切れかかっている時間帯を避ける、といった工夫が大切です。

また、ふらつきがある方は、家族が近くで見守る、椅子や手すりにつかまれる場所で行う、無理に片脚立ちをしない、という判断も必要です。

自主トレは、危険な運動を頑張ることではありません。

安全に続けられる運動を選び、転倒せずに日常生活へつなげていくことが大切です。

特に、最近転倒した方、歩行中に右へ大きく流れる方、方向転換でふらつく方、薬の効き方によって動きやすさが大きく変わる方は、一人でバランス練習を行う前に、主治医や理学療法士に相談しましょう。

体が右に傾く方の自主トレでは、無理にまっすぐ伸ばしすぎないこと、痛みを我慢しないこと、片側だけに偏らないこと、転倒リスクのある運動を一人で行わないことが大切です。

安全に行える範囲で継続しながら、必要に応じて専門家に確認してもらうことで、より効果的なリハビリにつなげやすくなります。

よくある質問(前回分の記事内容も含めて)

【前回の記事】
パーキンソン病で体が右に傾く原因とは?ピサ症候群・姿勢異常の見分け方を理学療法士が解説

パーキンソン病で体が右に傾く場合、「病気が進行しているのか」「薬で治るのか」「リハビリで改善できるのか」と不安に感じる方は少なくありません。

体の傾きは、パーキンソン病そのものの影響だけでなく、筋肉のこわばり、筋力低下、姿勢感覚のずれ、薬の効き方、背骨や骨盤の変形、痛みなど、複数の要因が関係していることがあります。

ここでは、パーキンソン病で体が右に傾く方やご家族からよく聞かれる質問について、リハビリの視点から解説します。

パーキンソン病で右に傾くのは進行のサインですか?

体が右に傾くことは、パーキンソン病の姿勢異常としてみられることがあります。

ただし、右に傾くようになったからといって、必ずしも「病気が急に進行した」とは限りません。

パーキンソン病では、筋肉のこわばりや動きにくさが左右どちらかに強く出ることがあります。その影響で、体幹や骨盤の左右差が大きくなり、立っている時や歩いている時に右へ傾きやすくなることがあります。

また、体のまっすぐを感じる感覚がずれている場合、本人はまっすぐ立っているつもりでも、実際には右に傾いていることがあります。

一方で、傾きが少しずつ強くなっている場合や、歩きにくさ、転倒、腰痛、疲れやすさが増えている場合には、状態の変化として注意が必要です。

特に、急に体の傾きが強くなった場合、片側の手足に力が入りにくい、しびれがある、ろれつが回らない、急にふらつくといった症状がある場合は、パーキンソン病だけでなく別の原因も考える必要があります。

右への傾きは、進行だけで判断するのではなく、いつから出てきたのか、どの場面で強くなるのか、寝ると戻るのか、痛みや転倒があるのかを確認することが大切です。

右に傾く場合、右側をストレッチすればよいですか?

右に傾いているからといって、必ず右側だけをストレッチすればよいわけではありません。

体が右に傾く場合、右側の体幹や腰まわりの筋肉が硬くなって、右へ引っ張っていることがあります。このような場合は、右側の脇腹や腰まわりをゆるめるストレッチが役立つことがあります。

しかし、原因はそれだけではありません。

反対側である左側の体幹筋や中殿筋が弱くなり、体を左方向へ支え戻す力が不足していることで、結果的に右へ傾いている場合もあります。また、左側の筋肉が硬くなって動きが制限され、歩行中に右へ流れやすくなっている場合もあります。

つまり、見た目には同じ「右への傾き」でも、どちら側を伸ばすべきか、どちら側を鍛えるべきかは人によって異なります。

自己判断で右側だけを強く伸ばし続けると、痛みが出たり、かえって姿勢のバランスが崩れたりすることがあります。

ストレッチを行う場合は、痛みのない範囲で、呼吸を止めずに、ゆっくり行うことが大切です。そして、できれば理学療法士に姿勢や歩行を確認してもらい、自分に合ったストレッチの方向や強さを確認しておくと安心です。

体が傾くのは薬で治りますか?

体の傾きが薬の影響と関係している場合、主治医による薬の調整で変化することがあります。

たとえば、薬が切れかかる時間帯に傾きが強くなる方もいれば、薬が効いている時間帯に不随意運動や姿勢の崩れが目立つ方もいます。また、薬の変更後から体幹の傾きが出てきた場合は、薬との関連を確認することが大切です。

ただし、体の傾きがすべて薬だけで治るわけではありません。

筋肉のこわばり、筋力低下、姿勢感覚のずれ、脊柱や骨盤の変形、腰痛などが関係している場合は、薬の調整だけでなく、リハビリや生活上の工夫も必要になります。

大切なのは、自己判断で薬を中止したり、量を変えたりしないことです。

パーキンソン病の薬は、症状全体を見ながら慎重に調整する必要があります。薬に関係しているかもしれないと思った場合は、主治医に相談しましょう。

受診時には、「薬を飲む前に傾きが強いのか」「薬を飲んで何時間後に傾きが出るのか」「朝と夕方で違うのか」「疲れてくると強くなるのか」などをメモしておくと、薬効との関係を考えやすくなります。

ピサ症候群はリハビリで改善しますか?

ピサ症候群は、体幹が左右どちらかに傾く姿勢異常です。パーキンソン病の方にみられることがあり、立っている時や歩いている時に傾きが目立ち、横になると軽くなる場合があります。

リハビリによって、姿勢や歩き方が改善しやすくなる方もいます。

ただし、改善の程度は人によって異なります。

筋肉の硬さや姿勢感覚のずれが中心で、寝ると傾きが戻りやすい場合は、ストレッチ、体幹の動きづくり、バランス練習、歩行練習などによって、姿勢を整えやすくなる可能性があります。

一方で、長期間同じ方向へ傾いた姿勢が続き、背骨や骨盤の変形、関節の硬さ、痛みが強くなっている場合は、完全にまっすぐ戻すことが難しい場合もあります。

その場合でも、リハビリには意味があります。

姿勢を少しでも保ちやすくすること、歩きやすくすること、転倒を予防すること、痛みや疲労を減らすこと、日常生活を続けやすくすることが大切です。

パーキンソン病で動きやバランスの問題がある場合、専門的な理学療法が推奨されており、筋力や柔軟性、姿勢に対する練習も支援の一部として位置づけられています。

ピサ症候群が疑われる場合は、早めに主治医や理学療法士に相談し、薬の影響、筋肉の硬さ、筋力低下、脊柱変形、歩行時の傾きなどを総合的に確認することが大切です。

何科に相談すればよいですか?

まず相談したいのは、パーキンソン病を診ている主治医です。

多くの場合は、神経内科や脳神経内科が中心になります。体の傾きがいつから出てきたのか、どの場面で強くなるのか、薬の時間帯と関係があるのか、転倒や痛みがあるのかを伝えましょう。

パーキンソン病の薬との関連が考えられる場合は、主治医による薬の調整が必要になることがあります。

一方で、腰痛、背中の痛み、しびれ、足の痛み、圧迫骨折、側弯症、股関節や膝の痛みなどがある場合は、整形外科的な評価が必要になることもあります。

また、姿勢や歩行、筋力、柔軟性、バランス、自主トレの内容については、理学療法士に相談することが重要です。

医師が病気や薬、骨や関節の状態を確認し、理学療法士が姿勢や歩行、運動機能を評価することで、より適切な対応につながります。

相談する時は、家族が撮影した写真や動画があると、状態を伝えやすくなります。特に、歩行中に右へ流れる様子、座っている時の傾き、薬の効き方による違いなどは、診察室だけでは再現しにくいことがあります。

体の傾きが気になる場合は、「年齢のせい」「パーキンソン病だから仕方ない」と決めつけず、主治医、必要に応じて整形外科、そして理学療法士に相談しながら、原因に合わせた対応を考えていきましょう。

まとめ:右への傾きは原因に合わせたリハビリが大切

パーキンソン病で体が右に傾く場合、リハビリでは「右に傾いている姿勢を無理にまっすぐ直す」ことだけを考えるのではなく、まず原因を分けて考えることが大切です。

右側の体幹や腰まわりが硬くなって右へ引っ張られている場合もあれば、反対側である左側の体幹筋や中殿筋が弱くなり、体を支え戻す力が不足している場合もあります。また、本人がまっすぐ立っているつもりでも、実際には右に傾いているように、姿勢感覚のずれが関係していることもあります。

そのため、リハビリでは、ストレッチ、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習を、その方の状態に合わせて組み合わせることが重要です。

硬さが強い場合は、痛みのない範囲で体幹や股関節まわりをゆるめます。筋力低下がある場合は、中殿筋や体幹筋など、骨盤と体幹を支える筋肉を使いやすくしていきます。まっすぐの感覚がずれている場合は、鏡や動画、壁などを使いながら、姿勢を客観的に確認し、少しずつ体の中心を再学習していきます。

また、歩行中に右への傾きが強くなる方では、どちらの足で支えた時に傾くのか、歩き始めや方向転換で崩れやすいのか、疲れてくると強くなるのかを確認することが大切です。歩行練習では、姿勢だけでなく、歩幅、重心移動、転倒リスク、疲労感も含めて考える必要があります。

自主トレを行う場合は、無理にまっすぐ伸ばそうとしすぎないこと、痛みを我慢してストレッチしないこと、片側だけを自己判断で鍛え続けないこと、転倒リスクのある運動を一人で行わないことが大切です。

特に、体の傾きが急に強くなった場合、痛みやしびれがある場合、転倒が増えている場合、薬を変更してから傾きが目立つ場合は、自己判断せず、主治医や理学療法士に相談しましょう。

パーキンソン病の右への傾きは、原因が一つとは限りません。だからこそ、姿勢、歩行、筋力、柔軟性、バランス、薬の効き方、痛みの有無を総合的に確認し、その方に合ったリハビリを行うことが大切です。

体の傾きを完全にまっすぐに戻すことだけが目標ではありません。歩きやすくすること、転倒を予防すること、痛みや疲れを減らすこと、そして日常生活を続けやすくすることが、リハビリの大切な目的です。

まずは自分の体がどのような場面で右に傾きやすいのかを確認し、必要に応じて専門家と一緒に原因を整理しながら、安全にリハビリを進めていきましょう。

体が右に傾く原因やピサ症候群との違いについては、関連記事「パーキンソン病で体が右に傾く原因とは?」で詳しく解説しています。

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